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「日本企業とシリコンバレーを結ぶ架け橋になりたい」 ITで日米協力進めるNPO 日系2世・スタンフォード大名誉教授の熱い思い

世界のIT産業の集積地である米シリコンバレーと日本企業のつながりを深めるため、現地の日系人が中心となりNPO(民間非営利団体)を立ち上げた。シリコンバレーでは多くの日系人が活躍しているが、高い技術力を持つ日本企業と力を合わせれば、激しい戦いが繰り広げられているIT産業で日米が相互に競争力を高められるという思いからだ。NPOの共同議長を務めるスタンフォード大名誉教授のダニエル・オキモト氏(74)は「日本企業とシリコンバレーを結ぶ懸け橋になりたい」と訴える。

NPO「シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム」(SVJP)は昨年8月に発足した。シリコンバレーで成功したベンチャー企業創業者や、アップルやグーグルといった世界的IT企業関係者ら約85人が会員に名を連ねる。その半数超が日系人で、個人の利益を顧みずに活動に加わっている。

「日本の卓越したハードウエア(機器)と、活力あるシリコンバレーのソフトウエアが団結すべきだ」

オキモト氏が目指すのは、ITで日米の連携を拡大、深めることにより世界で存在感を増すことだ。

シリコンバレーにはグーグルなどソフト分野を席巻するIT企業が多く集まるが、日本には電子機器・部品などのハード分野で強みを持つ企業が目立つ。現在、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)の拡大など、IT業界は変革期を迎えているが、両者が手を携えれば「相互補完性と相乗効果があると強く信じている」。

そのため、SVJPはシリコンバレーで活躍する起業家や投資家が日本に来る際に会合を開くなど、日本企業が現地の主要人物や企業と関係を持つための手助けに力を注いでいる。

オキモト氏には危機感がある。「シリコンバレーで日本企業がネットワークを築けていない」ということだ。自らも政治学者として教壇に立ってきたスタンフォード大にも日本人学生がいるが、留学期間を終えるとすぐに帰国してしまう。中国や台湾、韓国、シンガポールの留学生がそのまま現地企業に入社し、そこで広くネットワークを張り巡らせているのとは対照的に映る。

「シンガポールのような小さな国が広く関係を作っているのに、日本企業はそれができていない」

オキモト氏を突き動かしているのは、第二次大戦中に生まれ、収容所で育った日系二世の一人としての強い思いだ。

熱心なキリスト教徒で牧師だったオキモト氏の両親は、1937年に米国に渡った。42年8月14日にカリフォルニア州でオキモト氏は生まれたが、その2カ月後に一家の環境は一変する。開戦により日系人が「敵性外国人」として収容所へ送られることになったからだ。

世界的な彫刻家、イサム・ノグチ氏もいたというアリゾナ州の収容所は砂漠にあった。「隣人はヘビと毒虫」という粗末な建物で、夏は50度に迫る暑さ、冬は寒さに苦しめられた。すべてを失った厳しい環境だったが、両親は不満を口にせず前向きな姿勢を貫いた。オキモト氏の3歳の誕生日に終戦を迎えたが、戦後も父親は「逆境は自分を駄目にするか、もしくは強くさせる」という言葉を繰り返した。

「私のヒーローは日系一世。両親らは私たちの世代のために多大な犠牲を払った。両親が生きている間は何も恩返しができなかったので、残りの人生を日本と米国のためにささげたい」

2014年のことだ。オキモト氏は安倍晋三首相の関係者に1通のメールを送った。「日本の首相がシリコンバレーを訪問したことはない。今がその時だ」

当時、シリコンバレーでは日本の影が薄くなる一方で、巨大市場を抱える中国が存在感を増していた。

翌15年春、米上下両院合同会議で演説した安倍首相は西海岸へと飛んだ。シリコンバレーを初訪問し、オキモト氏や現地の起業家らと意見交換したのだった。

安倍首相訪問で「日本への関心は回復した」というが、満足はしていない。

「インドのモディ首相はひっきりなしに来ている。安倍首相も一度ではなく定期的に訪問してほしい」

困難な時期も経た日米関係だが、オキモト氏は絆の深さを強調する。

「経済、政治、外交、安全保障すべての次元で、決定的に重要な意味を持つ。将来については楽観的だ」

その笑顔は柔和だが、強い確信に満ちていた。(三塚聖平 産経ニュース

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