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各国のスタートアップ状況

起業家や投資家が集まり、スタートアップ企業が自らの事業などについてプレゼンテーションする北欧発のイベント「SLUSH」。今年10月には中国・上海で初めての「SLUSH SHANGHAI」が開かれた。この中で、日本の起業家にも関連する興味深い提携が発表された。

起業家や個人事業主らが共同でオフィスをシェアするコワーキングスペースの運営組織が日本、中国、台湾という地域の枠組みを越えて手を結んだのだ。これまで日本のスタートアップ企業が大市場の中国を目指すという動きはあった。今回の提携は、スタートアップ企業を育てる生態系が、各国・地域がそれそれぞれの国・地域の企業を育成するといった動きにとどまらず、アジア全体で世界に飛び出す企業を育てようという動きに変化してきていることを意味する。

「SLUSH SHANGHAI」のメインステージには中国内外の著名なスピーカーが登壇。スタートアップ企業50社がそれぞれの事業のプレゼンテーションを行い、会場を盛り上げた。彼らが取り組む事業は教育や仮想現実(VR)、ロボット、ビッグデータ、IoT、ゲーム、ブロックチェーンなど多岐にわたった。日本からはCerevo、しくみデザイン、ノーニューフォークスタジオなど10社が参加した。

上海で初めての開催となる「SLUSH」。世界各国からスタートアップ企業が参加した
日本からは東京、大阪、福岡などのスタートアップ企業が集まった

孫泰蔵氏の呼びかけに応えた郭守正氏

そのSLUSHの会場で、DMM.make AKIBAなど日本、中国、台湾にある5つのコワーキングスペース運営組織は、今後、相互に協力することで基本合意したと発表した。スタートアップ企業や投資家などの相互訪問、地域間交流事業を実施する場合の受け入れ、共同技術開発などにおける現地パートナーの紹介などで協働する。

合意した5つのコワーキングスペースは東京のDMM.make AKIBAのほか、同じく東京のABBALab、大阪のThe DECK、福岡のStartup GoGo、上海のXNode武士陣、そして台湾のSYNTRENDだ。このSYNTRENDを率いているのが、郭守正(ジェフリー・ゴウ)氏。シャープの買収で話題を呼んでいる鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)会長の子息である。

郭氏はカリフォルニア大学バークレー校工学部を卒業後、アニメやTVゲーム、映画を製作する山水国際娯楽(Serenity Entertainment International)を設立した。現在はSYNTRENDの董事長を務めている。

SYNTRENDは2015年5月に開業した複合施設で、台湾の秋葉原と呼ばれる台北市MRT(地下鉄)忠孝新生駅の近くに位置する。IT製品を取り揃える店舗のほか、スタジオや展示場、劇場、コワーキングスペースなどが入る。

協力関係を築くことで基本合意した日中台のコワーキングスペース。左から2人目がSYNTRENDの郭守正氏

今回の基本合意について郭氏は「スタートアップ企業らがグローバルに活動できる環境を整備することは非常に重要であると考えていた。そのような思いを持つ中で、孫泰蔵氏からの呼びかけがあり、参加を決めた」と話す。

今回の合意には、スタートアップ企業の育成などを手がけるMistletoe(ミスルトウ)の孫泰蔵社長が深く関わっている。ソフトバンクグループを率いる孫正義社長の実弟だ。孫氏は5月10日号の日経ビジネスで「志僑を集め、起業のエコシステムを形成すること」とビジョンを語っている。この考えに共鳴した1人が郭氏だった。

郭氏は言う。「我々は2016年3月に『スターロケット』というスタートアップ育成プログラムを開始した。このプログラムでは、主に2つの軸でスタートアップ支援している。ひとつはグローバル市場とつなげること、もうひとつはソフトウェアとハードウェアのハイブリッド型ビジネスモデルを支援することだ」。今回の協業は、このようなタイミングで声がかかった。

他のコワーキングスペースとの協業については、「起業家たちを支援するにあたり、我々は共に努力し、新事業の創出に挑戦しながら互いに補完する関係を築くことができるはすだ。そして最も重要な事は、グローバルなレベルでチームワーク力を高めていくことだ」と話す。

さらに郭氏は、日本のスタートアップ企業が台湾や中国の企業との交流を拡大することへの期待を語ってくれた。「スタートアップ企業は失敗を恐れてはいけない。環境の激変に応じて軌道修正ができる。技術と商品の開発に心血を注ぐ姿はとても印象的だが、むやみに手探りをしていてはだめだ。誰があなたの顧客なのかを見定め、顧客の問題解決や付加価値を作り出すことがより重要である」。

「そして、互いに信頼するためにも、オープンなマインドで意思疎通することを徹底してほしい。アイデアを盗まれるのではないかと疑心暗鬼になってはいけない。良いアイデアは、ビジネスでの成功につながって初めて評価されるものだ。そのためにもオープンマインドに意思疎通しながら、同じビジョンを抱く仲間を見つけることにもっと積極的になってほしい。そして、今回の合意をきっかけにその一歩を踏み出してほしい」

郭氏は今回の合意の後、11月18日から数日間かけて大阪や京都のスタートアップ企業の視察に足を運ぶなど、早速、日本のスタートアップ企業との交流を深めようとしている。

郭守正氏と約3年前からつながりがあり、今回の合意にも加わったABBALabの小笠原治氏は「『日本企業がアジアに出ていく』ではなく、同じ目線に立つ者同士が国境を越え、混ざり合うチャンスが来た」と語る。

小笠原氏は郭氏をこう評する。「郭守正氏は映画を製作した経験もあり、コンテンツ制作側の目線がある。その上、ハードウェア目線も持ち合わせており、2つの分野を融合させて考えることのできる数少ない人だ。礼節を重んじ、とても冷静だが、その一方で熱い思いを持っていて、相手の言わんとすることをよく考え尊重する。彼がスタートアップのメンターになったことはこの業界にとってラッキーなこと」。

今回の「SLUSH SHANGHAI」に合わせて、九州経済連合会と上海の新滬商連合会(Shanghai Entrepreneur Association)との会合も開かれた。新滬商連合会は上海の大手企業などで構成される民間の経済団体で、2008年4月に設立された。会員には星野リゾートと提携した復星集団、伊藤忠商事と提携関係にある杉杉集団、中国最大級のオンライン旅行会社C-trip、LCC(ローコストキャリア)の春秋航空など約150社が名を連ねる。今回の会合にはSLUSH SHANGHAIに参加した日本スタートアップ企業も出席し、自社の製品などを紹介した。

九州経済連合会の麻生泰会長は「政治関係では色々と難しいこともあるが、経済の世界において現場の前線で責任ある立場にいる自分たちこそが、率先して動いていかなければならない。若い経営者が新しい技術を用いることで、経済の分野において日中の新しい関係ができる可能性に期待する」とスタートアップ企業へのエールを送った。

九州経済連合会と新滬商連合会の会合。左から6人目が九州経済連合会の麻生泰会長(麻生グループ代表)

また、村田製作所がスポンサーとなって、スタートアップ企業が投資家などに自らの事業計画などを説明するピッチングイベントも開かれた。九州経済連合会や村田製作所の取り組みは「産業の新旧」や「企業の規模」といった枠組みを超えてイノベーションを生み出すためのシステムが動き始めていることを意味する。

中国でのスタートアップというと今は中国南部の深圳が話題になっているが、上海にも世界中からビッグプレイヤーが集まっている。XNode武士陣によると、上海のスタートアップ企業の数は、2016年3月時点で前年比20%増の7万社になり、ますますスタートアップ市場が盛り上がっているという。これは中国政府や大企業がスタートアップ関連ファンドを立ち上げるなど資金調達や助成金で支援する体制が整っているからでもある。

今回のコワーキングスペースの提携合意により、日中台のスタートアップ企業同士が切磋琢磨するとともに、互いに協力し、世界に打って出るきっかけになりそうだ。(日経ビジネス)

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