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「小さな大企業」に選ばれた日本の3社 無名ゆえの戦略とは

プロダクトだけが優れていても世界へは羽ばたけない。鍵となるのは「関係性の転換」だ。今回のスモール・ジャイアンツ アワードに選出された3社を例にその戦略を解説する。

東京・谷中にある高山医療機械製作所(高山医療)。いわゆる“下町の町工場”で作っているのは、スタンフォード大学やUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)など、世界屈指のカリスマ脳神経外科医に選ばれる手術器具の数々だ。

2016年からたった2年で、世界の名医たちから絶賛されるようになった高山医療のプロダクト。販売代理店は世界35カ国に拡大し、年商は5億円を突破した。

なぜ、小さな町工場が作る手術器具が、短期間で世界を制したのか。高山医療だけではない。スモール・ジャイアンツ アワードに選出された企業に共通するのは、無名でも世界から注目されている点だ。

プロダクトが高品質であることと販売実績は、必ずしも比例するわけではない。世界展開の成功の裏には、的確な経営戦略とそれを実行できる経営手腕がある。3社を例にその戦略を分析してみよう。

業界トップの人物を狙え

まずは高山医療の場合。独自のマーケットをいかにして築いたのか。

高山医療の戦略の特徴は、自社プロダクトを、世界最高峰のレベルを誇る組織のトップに立つキーパーソンに、最初に使ってもらった点にある。決裁権を持つカリスマ医師らの信頼を得たことで、自然とその教え子たちに口コミが広まり、ピラミッドのシェアを丸ごと獲得できたのだ。

そのための下地づくりとして、代表の高山隆志はまず、製造工程の8割を機械化し、製品の供給量を約20倍に増やした。さらに、国内トップクラスの脳神経外科医・上山博康と手術用のハサミを共同開発。ダメ出しにも突出した技術で応えて信頼を勝ち取り、“オペ立ち(手術の見学)”を許されたことが転機となった。

これにより、現場での医師のニーズを的確に把握したものづくりのスタイルを確立。従来の「製造元」と「顧客」という関係性の質を転換し、競合他社には真似できない企業価値をつくり上げた。

そして、16年には米国へ進出。高名な大学教授たちにコンタクトした。名医の卓越した手術の技は、ビデオに記録され、世界中の学会や授業などでシェアされる。それを見た他の医師や弟子たちに、自然と口コミでプロダクトの存在が一気に広まっていった。

欧州では、医師向けに行うワークショップを主催する大学教授にアクセス。大学等が主催するトレーニングコースに参加する医師に向けて、練習用の術具セットをどんどん貸し出した。

優れたプロダクトの魅力と口コミによって、世界中から貸し出し依頼が舞い込むようになり、その後はほとんどの医師が即時購入を決める。いまでは、現場の医師と共同で開発する案件も増え続け、世界の一流医師と対等の関係を築く「真のパートナー」になった。それまでの「製造元と顧客」という関係性をパートナーへと変化させ、市場を確立したのである。

関係性の「質的転換」

世界最古の眼鏡メーカー「アメリカンオプティカル(AO)」社の日本総代理店としてスタートした眼鏡メーカー、ブロスジャパン。福井県鯖江市の熟練職人の手で、AOクラシックフレームを蘇らせ、全世界へ供給した。これを足がかりに、独自開発の新ラインで、アジア展開を進める。

市場拡大の鍵となったのは、代表の浜田謙の「友人」戦略だ。プロダクトを「作品」として捉え、それに賛同してくれた取引先にだけ、「友人」として眼鏡を売る。顧客をプロダクトの魅力で感動させることによって、その仲間に口コミで良さが広まり、ファン層の拡大を狙う。企業が主張するメッセージへの共感が購入動機になる、いまの消費傾向をよく捉えている。

特筆すべきは、友人になるための努力、そして友人を大事にする努力を惜しまないことだ。本社2階のゲストルームは、取引先を鯖江に招いて直接工場を見てもらい、自分たちのものづくりのファンになってもらうためのもの。職人の仕事ぶりを見れば、芸能人やファッション業界関係者なども支持する華やかな眼鏡ブランドが、こんなにも一本ずつ手塩にかけて作られているのか、と感動するはずだ。

口コミで広まる感動の源泉をつくる大切な職人たちへの値切りは一切しないと決めている。

最後は、埼玉県入間市のインダストリアだ。イギリス、中国、韓国、タイなどに拠点を置いて、主要製品を52カ国に累計12万3000本納入する実績を誇る。ここでも鍵となるのは、顧客との「関係性」だ。

主力製品の「FILSTAR」は、水の流れだけで高精度にろ過するフィルター。交換不要のため手間やコストを軽減でき、環境への負荷も少ない。トヨタ、BMW、GMなど世界の一流工場が彼らの顧客だ。

一方、顧客の中で、かつてPCメーカーが「Intel Inside」とうたったように、「FILSTAR Inside」をうたう企業がある。大手工作機械メーカーのDMG森精機だ。

FILSTARが入っている自分たちの機器は、燃費が良く、産業廃棄物に配慮しているとアピールする。大手自動車メーカーだけでなく、工作機械にも組み入れられ、正に「共生」することで販路を広げてきたのだ。また、海外展開においては、特に東南アジアなど「工場を新設したいのにインフラが未整備な国」にある「水質を低コストで改善したい」というニーズを察知してアプローチしたことが功奏した。

これら3社の例から分かるように、地方の無名企業が世界に必要とされる存在になれたのは、「関係性の質の転換」が大きな要因と言えるだろう。長く共存できる関係性とは何か。環境の変化にも対応できる強い経営のヒントは、ここにある気がした。(Forbes)

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