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ほぼ1人で家電ブランドを立ち上げた若き経営者・中澤優子に迫る

2015年の8月、“ほぼ1人家電メーカー”株式会社「UPQ(アップ・キュー)」がたった2カ月でスマートフォンや大型ディスプレイをはじめとした家電を17種24製品発表し、話題となりました。同社を起業したのは、当時30歳だった中澤優子さん

各メディアでも注目を浴びる、若き女性経営者の仕事に対する哲学や思想について伺いました。 

たくさんいる営業マンの一人にはなりたくない

–大学卒業後、なぜカシオ計算機へ入社されたのですか?

中澤優子さん(以下、中澤):携帯電話をつくりたいという思いがあり、就職活動では携帯電話をつくっているメーカーを中心に受けていました。 

でも、メーカーって閉ざされた世界なんですよ。あの当時、法人営業は少なくとも5年程度のキャリアを積んだベテランであることや企画をする人は理系と決まっていました。文系の新卒だった私は、「カシオに新しい風を吹かせることができます」とプレゼンしたんです。 

携帯はたった10年の間で、PHSからスマートフォンへ破竹の勢いで変化したのですが、一方で、その10年間は就職氷河期であったこともあり、携帯をつくっている人たちは変わっていませんでした。だから純粋なユーザー目線を持っている人がカシオ内にいないのではないか、と考えたわけです。私は携帯の販売員のアルバイト経験もあるので、「今のカシオにはない“ユーザー”と“販売員”の視点を社内に持ち込めますよ」と。 

当時のカシオは、変革をしようという時期だったんです。今までにいないタイプである私を入れるなんて、カシオって話が分かるじゃんって思いましたね(笑)。 

–カシオで営業職に就かれていたそうですね。

中澤:私、いわゆる“量販営業”はやりたくなかったんです。そもそも携帯電話をつくりたくてカシオに入社したので。家電メーカーの営業先って、家電が並ぶ量販店なのですが、携帯電話だけは同じ量販に並ぶ製品でも、営業先が通信キャリアになるのです。そのため、通信キャリア向けの法人営業部署を希望して、そこに配属してもらうことを条件で内定を受けました。 

–「~をしたくない」というのは、単なる“わがまま”と捉えられる可能性もあるのでは?

中澤:私の場合、“わがまま”というよりは、やりたいことが明確に決まっていたんです。60歳まで働くことを考えたら、やりたいことができたほうが得じゃないですか? 

私たちって、いわゆる就職氷河期世代なので自分だからこそできる仕事は何なのか?と模索しながら就活をしていた世代だと思うんです。やりたいことができないのなら、何のためにあれほど苦労して就活をしたのか分からない。 

自分の“やりたいこと”を突き詰めたとき、私は携帯をつくりたいという答えが出たんです。だから、マーケティングもできて、営業の仕事にも関われて、予算管理もできる、携帯のすべてに関われる企画・プロダクトマネジメント職になりたいと、素直に会社にも伝えました。 

入社1年目で異例の企画職へ

–その後念願だった企画職に就きますが、営業職から企画職への異動にはどのような経緯があったのですか?

中澤:営業部長に企画をしたいと相談したら、「やってみろ」と背中を押されました。同時に「君にアイデアを発表する場所を用意する。準備期間は1カ月。その間は何をしてもいいけれど、つまらないプレゼンだけはするなよ。消費者が喉から手が出るほど欲しくてゾクゾクするような商品、そんな企画を生み出せ」と言われました。 

ゾクゾクさせる商品を企画するなんて、すごく難しい。それからは血眼になってアイデアを考えましたよ。新宿、横浜、立川など大きな駅に降りては人の観察。時には高校生をつかまえて、カフェでお茶をしながら話を聞いて、マーケティングをしていました。 

でも、それだけではアイデアなんか生まれてこない。ヤバい、発表の前日になっても企画ができていない。そんな差し迫って、考えて考えて考え抜いたとき、発表前日の夜にふとアイデアが降ってきたんです。それから徹夜で企画を資料に落として、事業部長や各部長たちがいる前で発表しました。その企画や経緯が認められて、入社した年の10月に、売るだけだった営業部署から、念願の「携帯電話をつくって売れる」企画部署に異動が決まりました。 

–商品企画というのは花形の職種ですが、1年目の中澤さんが担当するなんて異例なのでは?

中澤:一般的な企業でしたら、最低でも5年は他部署で経験を積まないとできない仕事なのは確かです。でもカシオはフレキシブルな企業だったのか、私にもチャンスを与えてくれました。タイミングもよかったんじゃないかな。男性ばかりの管理職に女性の登用を試みるなど、会社を変えようとしていた時期でしたし。 

所属していた携帯事業部が閉鎖され退職。そこからカフェのオーナーに

–カシオに5年在籍したのち、退職されました。なぜ辞められたのですか?

中澤:カシオが携帯事業を撤退したことで、私は退職を決めました。携帯に関われないのなら辞めようと。今、スマートフォンのない生活なんて考えられない時代なのに、その事業の採算が厳しいからという理由で部署を畳む。しかも培った知の財産も捨てるなんて……メーカーにとって苦肉の決断だったとは思いますので、理解はしています。 

携帯事業部にいたメンバーたちも私と同様に、希望退職する方が多かったですね。なので残っても、離れても、もう二度とみんなと一緒に働けないのかと思うと悲しかったです。私を育ててくれた人たちは、みんなバラバラになりました。ホームを失ってしまったような、そんな感じでした。 

–カシオを退職されてから、フリーランスの道を選んだ理由は何ですか?

中澤:当時は、女性で家電の商品企画の経験があるのは珍しく、各メーカーさんがお声をかけてくださったんです。カシオ時代に築いた人脈も助けになりましたね。これまでと同様に企画ができたので、楽しく働けました。お金を稼ぐために働くのではなく、楽しく、とことんがむしゃらに働けることが私にとって重要だったんです。 

–退職されてからカフェもオープンされました。なぜカフェ経営をしようと思ったのですか?

中澤:先ほどカシオのメンバーたちとは離ればなれになってしまったと言いましたが、その仲間たちが集まれる場所をつくりたくて。「ホームになるような場所がこのカフェであってほしい」という思いがありました。 

それにカフェって人間観察をするには最適な場所なんですよ。OLさんもおじいちゃんも、ギャルもオタクもいる。いろんなタイプの人がお店に来るんです。お客さんの様子を見ていると、商品開発のネタを見つけることができるんです。リアルな世間の声がカフェに集まって来るんですよね。 

30歳で起業。念願の携帯づくりを

–そして2015年の7月に株式会社UPQを立ち上げます。なぜ会社をつくろうと思ったんですか?

中澤:きっかけは、携帯業界に再度参入しやすい時代に変わったこと。これまではキャリアを通してでしか携帯を売ることができなかったのですが、SIMロックフリー端末でも売ることができようになりました。SIMロックフリー端末が台頭する時代が来るのをずっとカフェを運営しながら待っていたんです。 

私でも携帯をつくれる時代になった。じゃあ、携帯をつくろう。携帯を売るならブランドが必要だな、じゃあ会社をつくろう、と。単純に携帯をつくるために会社が必要だから、会社をつくっただけなんです。 

中澤さんがUPQで企画した携帯『UPQ Phone A02』

–起業時、社員を雇わず中澤さんだけで会社業務をこなしていましたが、たとえば営業職の人を採ろうとは思わなかったのですか?

中澤:その発想はなかったですね。むしろ私が営業をしたほうが会社にとってメリットが大きいと思っていました。営業の仕事は、「商品をいかに魅力的に説明し、相手を魅了するか」だと思うのですが、商品説明を一番うまくできるのはつくった私だなって。 

–起業して2カ月後には24もの製品を発表しましたが、2カ月でそんなにもつくるのは大変じゃなかったですか?

中澤:製造工程を中国の工場に委託して、その時期は毎週のように中国へ出張していましたが、そんなに大変でもなかったですよ。会社を設立して、まずは携帯のサンプルづくりに着手したのですが、完成品を待っている間って案外、時間が余るんですよね(笑)。 

余った時間を使って、アクションカメラをつくったり、キーボードやTVをつくったり……ってしていたら、いつの間にか24製品が揃っただけなんです。 

手軽な価格の50インチ4Kディスプレイは発売当初から話題に。写真は4Kディスプレイ最新機種の『Q-display 4K50X』

誰も尊敬していないし、誰かになりたいとも思わない

–起業してから1年が経ちましたが、一番の挫折は何でしたか?

中澤:ないです。商品づくりが失敗したり、お客さんからクレームが来たり、製作が遅れたり……うまくいかなかったことは多々あります。でもそのことでいちいち落ち込むほど、私はやわではありません。 

–かっこいい。では中澤さんのロールモデルはいますか?

中澤:それもいません。私が今していることは、誰もしなかったことです。 
UPQの仕事が特別、といっているのではなく、どんな仕事でどんな課題を目の前にしても同じです。今の仕事に今の立場で直面しているのはその人だけ、ですよね。だから本を読んでも、セミナーに行ってもヒントは得られない。私は誰も尊敬していないし、誰のマネもしたくない。誰かと比べることもできないし、競争したいとも思っていません。この仕事は評価されたいと思ってできるものではないので。 

私がいつも気にしていることは、目の前の課題に120%の力で越えられるか否か。それが仕事をしている上で大切にしていることですね。 

まとめ

インタビュー中、何度も「私は携帯がつくりたい」と語っていた中澤さん。その言葉の端々には強い意志がこもっており、圧倒されてしまうほどの気迫を感じました。その思いは「やりたいことを突き詰めるべき」という仕事観から来ているようです。好きなことに真っ直ぐ取り組む彼女の姿勢に、芯の強さが見えました。(SmartNews)

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