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インドと日本の「非欧米型」イノベーションから学べること

<日本企業の「出向」システムから、現代インドの「2000ドル自動車」まで、欧米とは異なる形のイノベーションから得られる学び>

「イノベーション」という言葉からは、グーグル、アマゾン、イーベイなどの企業を思い起こす人が多いだろう。確かに、これらがいずれもイノベーティブな会社であることは間違いない。しかし、私たちは日本をはじめとする東洋の国や地域からも多くのことを学べる。

1980年代から90年代にかけての日本のイノベーションから、3つの学びが得られる。

1つ目は「長期的視点で市場のチャンスを伺う」姿勢だ。日本企業、特に電機メーカーは、創立当初からそのような哲学を全社に浸透させていた。だからこそ彼らは、次から次へと優れたイノベーションを起こすことができたのだ。日本企業は目の前の利益よりも「次の四半期」の数字を熱心に追求する。

2つ目はオープン・イノベーションの重視。これは、日本人自身は意識していないかもしれないが、「出向」という流動性の高い雇用システムによるところが大きい。出向のおかげで、同僚同士やサプライチェーン、顧客との距離が縮まり、協働しやすくなる。

3つ目の学びは、従業員の教育とマネジメントだ。日本の経営者は人材がイノベーションの最重要リソースと考えている。そして、従業員全員が組織全体や顧客、競合について深く理解することを求める。従業員に、自社の未来や、産業全体の方向性について、あるいは顧客のニーズがどのように変化していくかなどを考えさせるのだ。それによって組織はアイデアで溢れかえることになる。

他国の模範となる現代インドの「倹約イノベーション」

一方、現代のインドは「倹約イノベーション」というコンセプトを打ち出し、他国の模範となっている。インドは、概して財力、材料面、また施設設備面でリソースが限られている。倹約するにはイノベーションを起こし頭を絞るしかない。そうして、著しく低いコストで商品やサービスを実現させる。それが倹約イノベーションだ。

単にコストを抑えるだけが倹約イノベーションではない。例えば、ムンバイにジャイプール・フットという企業がある。この会社は、ゴムや木材、タイヤコード(タイヤの製造に使われる繊維)を原料にした義肢を50ドル以下で製造している。だがこの義肢は、1万2000ドルかけて作られた製品に匹敵する性能があるのだ。低コストだが低品質ではないということだ。

タタ・モーターズはたった2000ドルの自動車「ナノ」を発表し、世界を驚かせた。ナノのビジネスモデルは、すべてのプロセスにおいて倹約イノベーションの斬新さを示している。メーカー側に原価目標を達成させるとともに、自家用車を所有することなどとてもかなわなかったような数百万もの人々の夢を現実化した。

また、新しいエンジン管理システム、ステアリングシャフトの軽量化、エンジン冷却モジュールの改良など、技術面の進化も伴っていた。革新的な自動車を組み立てるための、世界中のパートナー企業とのネットワークもできた。さらにこのイノベーションには、修理・メンテナンス、融資などサービス面の改革も欠かせなかった。

「ジュガード」という日常的に使われるヒンディー語がある。同じ意味の英語が存在しないのだが、おそらく「リソースが限られる中で効果的な応急の解決策を見出すことで困難に立ち向かう」といった意味になるのだろう。ジュガードの精神がインド中に広まっていることは「荷車にディーゼルエンジンを応急的にくっつけてトラック代わりにする」といった創意工夫が日常的に行われていた事実からもよくわかる。

ジュガードの精神には「逆境の中でチャンスを見出す」「最小で最大の効果を上げる」という2つの要素があるのだが、これらはいずれも倹約イノベーションにも当てはまる。

宇宙開発から、冷蔵庫、腕時計、眼科手術まで

インドでは、取得特許数のような古典的なイノベーションの指標では低い水準にあっても、実際には多くの私企業がサービスやプロセス、ビジネスモデルのイノベーションを起こしている。これまでの標準的なイノベーションの基準だけを見ていては、それらを見逃してしまうだろう。それゆえ、倹約イノベーションは「東洋の隠された宝石」なのだ。

以下、倹約イノベーションの具体例をいくつか紹介しよう。

●先進的な宇宙開発

インドが参戦する以前には、火星を周回する人工衛星の打ち上げに成功したのは3例だけだった。米国とロシア、そして欧州宇宙機関(ESA)だ。しかし、インド宇宙開発研究所(ISRO)によるマンガルヤーン(「火星の乗り物」を意味する)人工衛星プロジェクトは、その列に加わっただけでなく、これまでで最低コストの恒星間ミッションとなった。7400万ドルしかかかっていないのだ。NASAの火星探査計画MAVENには、その10倍のコストが費やされている。

マンガルヤーン・プロジェクトは、インドが「低コスト」の国ではなく、「卓越した能力」の国であることを証明した。欧米発の多国籍企業は、インドを安い労働力の供給元としか見ていないことがほとんどだ。それは重大な誤りだ。インドの科学者やエンジニアは世界レベルにある。そして彼らの才能は、現状、低コストで手に入れられるのだ。

●クールなアイデア

小型冷蔵庫の「チョトゥクール」は、インドの食料貯蔵にまつわる課題に取り組んだイノベーションだ。この国の約8割の家庭は冷蔵庫を持っていないばかりか、借りて使うこともできないでいる。それもあり、国全体でおよそ3分の1の食料が廃棄されているのが現状だ。

チョトゥクールは12ボルトのバッテリーで、摂氏8度から10度の温度で食料を冷やせるプラスチック製の入れ物だ。国内で流通している一般的な冷蔵庫のコンプレッサー技術を使わずに、独自の熱電方式、あるいはソリッドステート方式の冷却システムを採用している。また、扉は手前ではなく上部に付いている。内部に最大限冷気を閉じ込めておくための工夫だ。

世界最薄の防水腕時計を考案し、開発・生産している国といえばスイスか日本と思うのではないだろうか。実はインドなのだ。しかも設立されて10年と少ししか経っていない会社「タイタン」が、その偉業を成し遂げたのである。

タイタンがその挑戦を始めたとき、彼らはスイスの時計職人たちのところへ赴き、アドバイスを求めた。しかし、職人たちは口を揃えて、そんな時計はありえないと言った。超薄型の時計も、防水時計ももちろん作れるが、その両方を同時に実現するのは無理だという。タイタンは結局、声高にその技術を誇ることもなく、控えめな態度で偉大な技術的ブレークスルーを成し遂げた。4年かかったが、時計製造の常識を覆すエンジニアリングの画期的大勝利だった。

●注目される眼科病院

インドの地方都市マドゥライのある医療機関が、経済的に恵まれない人の眼科治療に関するイノベーティブなビジネスモデルを作り上げた。アラビンド眼科病院が、従来の眼科手術の効率を10段階は引き上げるテクニックを開発したのだ。このビジネスモデルは、何百万人もの貧しい視覚障害者に、無料もしくはほとんど無料で手術を行うことを可能にした。それでいて病院は手術によって収益の40%を生み出している。

アラビンド眼科病院は1年に20万件もの白内障の手術を行っている。これは同病院が世界最大の眼科学の研究施設であることも示している。なにしろ、ハーバード大学やジョンズ・ホプキンズ大学の学生が体験医療実習やトレーニングに訪れているのだ。(Newsweek)

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