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グーグル社、チームの生産性を高める方法を大規模調査…解明された衝撃の“答え”

先日日本の生産性が先進国の中で最下位(何十年も続いていますが)という統計が発表されましたが、チームの生産性についてGoogleが統計的なアプローチを行なったようです。果たして何が解明できたのでしょうか。

チームの生産性を高める方法については、いろいろな主張があります。ビジョンを語る強いリーダーシップが必要だという意見もあれば、組織にあまり階層を設けず、メンバーが全員参加でビジョンを語り合うべきだ、という意見もあります。仕事とプライベートの付き合いは分けたほうがよい、と言う人もいれば、家族ぐるみの付き合いをする組織のほうが生産性が高いという主張もあります。

 このようにまったく正反対の意見が、それなりの理屈(納得性)をもって語られることは、よく見られることです。その理由は、比較するための実験が難しいからです。

 これは私が専門にしているビジネスに関係する領域だけでなく、社会科学的な分野全般にいえることです。まったく同じ仕事を、同じ環境のもとで、同じメンバーで同時並行で進めることはできませんし、期間が異なれば環境が変わりますし、メンバーも経験することで学びます。

 しかし最近、このチームの生産性を高めるという難しい問題に対して、グーグル社が統計的なアプローチで解を求める取り組みを行った結果が注目されています。今回はニューヨークタイムスマガジンに掲載された記事を参考にしながら、この調査のプロセスと、結果としてわかったことに私の解釈を加えて皆さんにお伝えします。

 グーグル社がチームの生産性を高める取り組みを行った理由は、冒頭で紹介したような説のなかには、ある程度正しいものもあることが経験的にはわかっているのですが、誰も客観的なデータをもって検証したことがなかったから、というものです。

 同社は2012年に「アリストテレス」という名前のプロジェクトを立ち上げました。その目的は、完璧なチームをつくるのに必要な方法を、統計的な手法を使って見つけ出すことでした。そのために、社内の統計学者、組織心理学者、社会学者、エンジニアなどを集めて、のべ5万人以上の社員が参加する何百ものプロジェクトを調べることにしました。

 さて、このプロジェクトがチームの生産性を高める方法を探るために、最初に着目したのは、チームメンバーの性格や行動、バックグラウンドと、その構成でした。例えば次のような視点で観察を行いました。

・同じような興味を持っている人たちが集まったチームは生産性が高いのか。
・チームメンバーはどれくらいの頻度で、会社の外で食事をするのか。
・男女のバランスはチームの生産性に影響があるのか。

しかしながらプロジェクトは、考えられるありとあらゆる切り口でデータを分析しましたが、なんのパターンも見つけることができませんでした。
 例えば、特に優秀だと評価されているチームをいくつか見てみると、仕事が終わった後も一緒に遊びに出かけるチームもある一方で、会社の外ではほとんど交流しないチームもありました。また、強力なリーダーを必要としたチームもあれば、個々の意見が尊重されるフラットな組織を好むチームもありました。面白いことに、傍から見るとほとんど同じに見える2つのチームの業績が、正反対だったこともありました。

 結局、メンバー構成が業績の違いを生み出すという有意な証拠は発見できませんでした。要するに、性格、行動、バックグラウンドの要素は、チームの成功に影響を与えないということです。

 プロジェクトチームは、次に「組織の規範」に着目しました。組織の規範とは、我々が集団として活動する際に、その集団を支配する行動基準や不文律のことです。組織の規範はチームに大きな影響を与えます。組織の規範は個人のそれよりも優先されるからです。

 調査を始めたところ、新たにいろいろなことがわかってきました。討論よりも、コンセンサスを重視するチームもあれば、納得いくまでとことん議論したり、常識を打ち破るようなアイデアを出したりすることを重視しているチームもありました。

 誰かが発言している途中で他の人が口を挟むチームでは、リーダー自身がそれをすることによって、その特徴が強化される傾向にあります。一方で人が話しているときには最後まで聞くことを重視するリーダーもいます。そのようなチームでは、誰かが途中で口を挟むと、ほかのメンバーが、最後まで聞くようにと丁寧に促します。

 全員が好きなだけしゃべるほうがいいのか、強いリーダーシップがあちこち脱線する議論を終わらせるほうがよいのか。人の意見に対して気軽に反対意見を述べるほうが有効なのか、それとも摩擦は避けるべきなのか。データからそれは見えてきませんでした。パターンが多すぎることは、何もパターンがないよりも悪いことです。

さらに調査を進めた結果、一つ統計的に有意な特徴が判明しました。

 それは、優れたチームは「心理的安全」という状態にある、ということです。

 心理的安全という言葉は、英語のpsychological securityの直訳ですので、少しわかりにくいかもしれませんね。心理的安全を私なりに解釈すると、チームのメンバーが、このチームで自分は、恥をかかされたり、拒絶されたりすることはなく、全面的に受け入れられていると信じている状態です。

 そして、心理的安全状態にあるチームのメンバーは、自分の声のトーンや、言い回し、そのほかの言葉以外の合図に対して、相手がどう感じるかについて非常に敏感です。生産性の高いチームは心理的安全状態にあるという相関関係は明らかになりましたが、どうしたらそれが仕組みとして組織に落とし込めるかは、わかっていませんでした。心理的安全という用語の意味からしてそうですが、厄介で難しいのです。

 そこで、プロジェクトチームはチームリーダークラスの有志を募って、彼らに心理的安全を実現するアイデアを、それぞれで考えてもらうというアプローチをとりました。するとチームリーダーの一人が手を挙げました。彼は自分のチームの生産性が上がらないことに悩んでいました。

 そこで彼はプロジェクトに手伝ってもらい、チームメンバーへのアンケート調査を実施しました。すると、「社内におけるチームの役割や目的が不明確」で、「自分たちの仕事が会社に与えるインパクトが小さい」とチームメンバーが考えていることがわかりました。

 この結果に衝撃を受けたリーダーはチームの全員を集めて、インフォーマルなミーティングを開きました。そこで彼は「これからみんなの知らないことを打ち明けよう」と断った上で、自身が末期がんに冒されていることを告白しました。

 全員が驚いて呆然としていましたが、しばらくするとメンバーの一人が立ち上がって自分の健康状態を打ち明けました。するとそこからは堰を切ったように、チームメンバー一人ひとりが自らのプライベートな事柄を語り始め、それが終わるころには、自然に今回のアンケート結果についての議論になったそうです。

 プロジェクトチームはもちろん、病気のことを話すようにリーダーに指示したわけではありません。プロジェクトが示唆したことは、自分自身の困難を打ち明けることが、組織の規範について話すためには欠かせない、ということだけでした。

チームメンバーへの心遣いや共感

 チームが結束するためには、重病のリーダーが病気を打ち明けることが不可欠だと言っているわけではありません。職場によっては、自分の気持ちについて話すのは違和感がある、という雰囲気のところもあるでしょう。実際、IT企業にはこうした傾向が強いものですが、心理的安全が組織の生産性を高めることがデータとして示されたことで、この状態にある組織をつくろうという意識が従業員に生まれたのです。

 たとえ意見の合わない同僚と難しい会話をするときにも、効率的に仕事の話だけをすることはできません。どんな時も、我々は相手が本当に自分の話を聞いてくれているかどうかを知りたいのです。自分の仕事が大切だと相手に思ってもらいたいのです。

 このプロジェクトの発見は、社員一人ひとりが会社で本来の自分を曝け出すことができること、そして、みんながチームメンバーへの心遣いや共感を持っていること、つまり心理的安全状態にあることが、チームの生産性を高めることにつながるということでした。

 心理的安全の重要性は以前から指摘されていたことです。しかし、この結論を皆さんにお伝えする価値があると私が考えるのは、ときにはただの主観や好みであるとされがちな、組織運営に関する諸説のなかで、統計的に有意に意味があるものが特定されたことにあります。

 それを組織内に取り入れようとしても、先ほど申し上げた通り一般的な処方箋はありません。まずは、あなたの所属する職場でこの話題を取り上げてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。(Business Journal)





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