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執筆から配信までわずか2分 脅威のスピードを誇るAI記者

第3次AIブームのなか、生み出された“AI記者”

日本経済新聞社は、2017年1月25日に人工知能(以下、AI)が文章を生成するサービス「決算サマリー」を公開。これは、上場企業が発表したデータをもとに、AIが文章を作成し「業績速報」として配信するサービスだ。記事公開まで、人の手は一切加えられないという。

まずはじめに、『ゴルフ・ドゥの17年3月期、純利益12.5%増8100万円』という記事をスライドに映し出した。その内容はというと、前年比などの推移はもちろん、同社の売上高が前年を上回った理由を「直営店およびフランチャイズ加盟店への業績に貢献している」ことなど、しっかり要点を捉えた記事となっている。この記事こそが、AI記者によって作られた記事だという。

「日経のデジタル事業の中でもっとも力を入れているのが、このAIサービス」と語る藤原氏。第3次AIブームと呼ばれている今、同社が開発したAI記者への反響も大きかったという。はたして、AI記者はどのようなプロセスで業績速報を配信しているのだろうか?

AI、IoT、ビッグデータに関する記事数の変化をまとめたグラフ。
2017年はAIの記事数がダントツに多く、注目度も高い

 

「まず『東京証券取引所適時開示情報サービス』が開示した『決算短信』というデータを取得します。決算短信とは、売上や利益などの数字と、決算状況に至った背景が書かれたPDFとXBRL形式のデータのこと。この決算短信を日経のサーバーに取り込んで、Amazon Web Serviceで構築したシステムに読み込みます」

読み込まれたPDFから項目ごとにテキストを抽出し、文章の各構造を解析。原因と結果の文書ペアを見つけ出して、ネガティブ文とポジティブ文を分析。そこから、業績要因とそれ以外の文を分類する。分類された文章は、日経が定めた基準をもとに、さらに業績要因を選択してから、文章を読みやすく要約して整えた後、記事が公開される。

図解されたAI記者による記事公開までのフロー

 

こうして、分析と解析を重ねて生成された記事は『日経電子版』と『日経テレコン』上に配信。なんと、配信までにかかる時間は2分ほど! とてつもない速筆記者だ。

「AIが書いた記事には、内容が非常にコンパクトという特徴があります。そのため、人間が書いた記事と見比べると違いがわかります。見分けるポイントは『なぜこの業績結果につながったか』という文章の書き方です」

藤原氏が例にあげたのは、雪印メグミルクの決算に関する記事。人間記者の文章には「自宅で酒をたしなむ『家飲み』が広がり、おつまみ用のチーズ商品が好調だった」などの補足情報がある一方で、AIの記事には「チーズは市場が伸長する中で好調に推移した」というように、原因と結果を端的にまとめている。

向かって右がAI記者の記事。少々淡白な印象があるが、その内容になんら問題はない

 

 

決算ピーク時にも2分で1本の記事を作成

同プロジェクトは、2015年3月にデジタル部局の若手エンジニアたちが社内チャットでの雑談がきっかけとなった。そして同年冬には、東京大学の松尾研究室との共同研究開発を開始したという。

「2016年の夏頃にはプロトタイプが完成し、徳島大学発のベンチャー企業・言語理解研究所(ILU)の技術協力を得て開発に着手。同年12月にはベータ版が完成し、2017年の1月にはベータ版サービスを公開しました」

1月25日のサービス開始から5月26日まで、公開されたAI記者による記事は、6787本とのこと。

一方で日経の記者は、1人につき上場企業50~70社を担当し、決算発表時期には定型原稿を作成する。しかし、1人の記者がどんなにがんばったとしても1日に5社の業績速報を書くのが限界だとか。そのため、年に4回訪れる決算ピーク時には、毎分300社が決算を開示するが、速報として執筆できるのは、注目度の高い大企業に限られてしまうという。

「ただ、どんなに小さな会社でも企業情報を求めているユーザーは必ずいます。AI記者による記事の大量生成は、そうしたユーザーのニーズに応えるサービスとなるはずです」

AI記者と人間の記者、それぞれの強みを生かすサービスへ

より多くの決算情報を瞬時に届けてくれるAI記者。この新たな仲間に対して、編集部員たちはどう受け止めているのだろうか?

「AIの導入によって、業務の変更は起きてくると思います。ただ、編集部員たちも仕事を取られるという意識はまったくなく、好意的に受け止め『あんなことはできないの?』など、いろいろな提案してくれます。AI記者が業績速報などの定型業務を行うことで、人間の記者の負担が減るため、サポーターとして非常に期待してくれているようです」

これまで、人の手で作られてきた速報や定型業務をAI記者に任せることで、記者は自分の足を使って取材ができるため、記事内容の“付加価値”を高めることにつながるという。

「文章の流暢さや創造性などの課題が残るものの、数字の正確性と、記事の大量生成、処理速度は、AI記者の最大の“強み”になります。人間の記者は、負担が軽くなったぶん、業績速報で特徴的な決算をした企業に後追い取材を続け、どんどん情報を掘り下げていくことで、きちんとした報道をすることができるはずです」

AI記者導入後に予想される、業務負担の変化を表すグラフ

 

今後は文章力をチューニングしつつ、業績速報のほかにも市場速報や、統計記事、社長交代、プレスリリースなどの“パターン化された記事”の執筆もAI記者に任せていく予定、と藤原氏。

まさに、人とAIが共存する時代の幕開けを感じるスピーチだった。数年後には「AIに仕事が奪われる!」という考え方のほうが、時代遅れになっているのかもしれない。(JB Press)

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