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スタートアップ創業者が起こしがちな21の間違い

 

スタートアップとスモールビジネス(一般企業)の常識は大きく異なる。一般企業でよしとされることのほとんどが、初期のスタートアップにおいては無駄とされる。

Y Combinatorのプレジデント、サム・アルトマン氏は「スタートアップ創業者は97%のことにNOという必要がある」という言葉を残している。

ここからは、一般企業では正しいとされることが多くても、スタートアップが成功するためには避けるべき行動、思考パターンをいくつか紹介していく。スタートアップならではのアイデアを磨くために、こうした一般企業との違いをよく認識しておこう。

■間違い(1)詳細なビジネスプランを作る

初期段階で詳細なビジネスプランを作成しようとするファウンダーがいまだに多い。特に大企業で経営企画を経験した人にありがちだ。

しかし、スタートアップが最初に思いつく課題仮説やソリューション仮説は、顧客の前でプロダクトやプロトタイプを示し、フィードバックをもらうとガラリと変わる可能性が非常に高い。

スタートアップにおいては、プロダクトのスプリント(継続的な改善)やピボットが日常的に起きる。ピボットを前提としないような企画書数十ページ分にも及ぶ詳細なモデルを作ることはそもそも間違いだ。

■間違い(2)正確なファイナンシャル・プロジェクションを用意する

同様に、Product Market Fit(PMF、市場で顧客から熱狂的に愛される製品のこと)を達成する前に正確なファイナンシャル・プロジェクション(資金面の計画)を作ろうとすることも無駄だ。

もちろん、ある程度売り上げの見通しを実現できる可能性が高まるシリーズA、シリーズBの投資を受ける段階ともなればプロジェクションが重要になるが、アイデアの検証(ベリフィケーション)をしているような、ビジネスの前提条件がまだ見えていない不確実な段階(シード期)では全く意味がない。

■間違い(3)精緻なリポートにこだわる

精緻なリポートを作ることも無駄だ。リポーティングラインが決まっている一般企業で働いた経験があると、どうしても上司への「報告書作り」は重要な仕事と考えがちだ。経理部門出身者は会計リポート、マネジャー経験者はパフォーマンスリポートに力を入れることが多い。

しかし、スタートアップにとってリポートという形で定型的な考察や中間・結果報告をすることは重要ではない。

それよりも、既存の枠組みではすくい取れない顧客意識(顧客インサイト)の深掘り、潜在的課題の発見、市場に隠れていそうなアイデアのヒント(秘密)などを探して素早くメンバーに報告することがより重要になる。

■間違い(4)「まあまあ好かれる」プロダクトを大勢の人向けに作る

大企業が得意とする持続的イノベーションは、自社の過去のプロダクトや競合他社のプロダクトをベンチマークしながら少しずつ良いものを作っていくこと。つまり「まあまあ好かれるプロダクト」を大勢の既存顧客に届けていれば上司からは文句を言われないし、あなたは社内で“優等生”と見なされるだろう。

しかし、スタートアップにとって「まあまあ好かれるプロダクト」を作ることは失敗を意味する。それでは市場を再定義するような破壊的イノベーションができるプロダクトにならないし、ターゲットとする市場で圧倒的なシェアを取るのは難しいだろう。

「大勢に対してまあまあ評価される」プロダクトではなく「一部の人に熱狂的に好かれる」プロダクトを作ることこそ、スタートアップの使命と心得たい。

■間違い(5)詳細な仕様書をもとに開発する

これは、システムエンジニア経験者の起業家にありがちなわなだ。スタートアップはいかに早くスプリントのサイクルを回せるかの勝負になるので、詳細な仕様書などは要らない。

顧客との対話をおろそかにし、「自分はプログラマーだから仕様書で指示されたことしかしない」などと、自分の仕事範囲を限定したがるメンバーをスタートアップ初期のコアメンバーに参加させてはいけない。

■間違い(6)最初に想定したビジネスモデルに執着する

「詳細なビジネスプランを作る」という間違いと共通するが、過去にビジネス上の成功体験がある人ほど最初に立てたビジネスモデルが最善であると信じ込んで、執着しようとする。

スタートアップのビジネスモデルは顧客の反応によって常に覆されることを前提に作っていく必要がある。最初のアイデアが否定されたとしてもひるまずに、そこから学び続けることが重要である。

■間違い(7)競合を意識しすぎる

潜在的な競合を意識することは悪くない。また、ビジネス環境を左右しかねない大手のプレーヤー、グーグルやアマゾンなどの動向を注視することも大事だ。

しかし、競合をベンチマークしすぎて、「あの会社がこう動いたから僕たちも動こう」といった追随型になることは最初から負けを認めているようなものだ。いくら競合の動きを追いかけても、独自の顧客インサイトを見つけて競合に対して優位に立つことはできない。

■間違い(8)差別化を意識しすぎる

マーケティングの経験者は、口を開けば「差別化」と繰り返すが、スタートアップにとって差別化をすることは結果論であり、目的ではない。「競合と差別化できるサービスを作ろう」という発想は、カスタマーの声を考慮しない、作り手側のロジックに陥ってしまうことが多い。

プロダクトを作るときは、差別化を目指すのでなく、いかに高いユーザーエクスペリエンス(UX)を提供できるかをベースに考えるべきである。

■間違い(9)Nice-to-haveな機能を追加する

「便利な機能がいっぱいあったほうがユーザー受けするだろう」と、初期段階からやたらとNice-to-haveな(あったらうれしい)機能を実装するプロダクトをよく見かける。

しかし、PMFが達成できるかどうかは「あったらうれしい機能」の多さで決まるわけではなく、カスタマーの痛みが大きい課題を解決できるMust-haveの(なくてはならない)機能が実装されているかどうかで決まるものだ。

スタートアップが注力すべきはMust-haveなコア機能に絞り、徹底的にその実現に取り組むことである。

■間違い(10)最初からプロダクトデザインやユーザビリティーの細部にこだわる

これはデザイナーにありがちだが、ハードの製品ではない限り、プロダクトデザインや操作性を細部まで詰めることは二の次でいい。

デザイン細部の完成度を上げるためにリソースを投下するのは時間とお金の浪費である。完成度は70 %くらいで、どんどんローンチして、顧客のフィードバックを得たほうがよい。完成度80%、90%を目指すディテールの改善は、後からでよい。

■間違い(11)最初からシステムの自動化・最適化を行う

初期段階の起業家からピッチ(短いプレゼン)を受けるときに「我が社は、人工知能技術を組み込んでプロセスを自動化しています」と説明されることがある。初期段階で、いきなりシステムの自動化やプロダクトの最適化について考えるようなスタートアップは、アイデアの検証を徹底する前に成長するときのことを考えている。まさに、プレマチュアスケーリング(未成熟なままの拡大)そのものだ。

顧客の声にしっかり耳を傾けたり、成果を検証したりする初期の段階では、人工知能に顧客の声を学ばせるのではなく、ファウンダー自身が学ぶべきだ。

■間違い(12)ビジネスモデルが出来上がる前に積極的に人を雇う

企業は根底にビジョンがあって、その上にビジネスモデルがあって、それを体現したプロダクトやUX、ビジネスプロセスが築かれる。

つまり、ビジネスモデルを模索しているPMF前の段階では、その会社で必要なプロセスやメンバーの役割分担の切り分けは不透明な状態が続く。ビジネスモデルが変われば、必要な人材の質(能力)や配分もまったく変わる。

よって、ビジネスモデルが見えていない段階で積極的に人を雇うのは誤りだ。

特に注意したいのが特定のスキルに秀でた人材を早くに雇うこと。特定分野の専門家はソリューションそのものに直結する。その人材を活用するために開発したプロダクトは課題ドリブンではなく、ソリューションドリブンになりかねないからだ。逆に、技術全般を幅広く理解できる汎用能力の高いCTO(最高技術責任者)を招き入れることは非常に重要。スタートアップの生死を分けるクリティカルなポイントである。

■間違い(13)直接関係のないネットワークイベントや飲み会に参加する

残念なことに、世の中には起業家になりたいけれど、口だけで行動に移せない人が多くいる(私は、彼らをWannabe Startupと呼んでいる)。こういう人たちは人脈を広げるネットワークイベントが大好物。彼らを標的にしたイベントもたくさん開かれている。さらにそこには、“情報収集”に取り組む大企業の新規事業担当者の人たちも交じる。こうしたイベントに参加すると何かすてきな出会いが生まれそうな雰囲気がある。

しかし、起業家がまず会いに行くべき相手は顧客であり、次は自分と一緒にスタートアップに参画してくれそうな仲間である。

■間違い(14)経歴が立派な営業責任者や事業開発担当者を雇う

ビジネスに箔をつけたり、足りない経験値を補ったりするために、経歴が立派な人をメンバーに迎え入れたい気持ちは分かる。でも、迎え入れには、それなりの「お膳立て」(多めのストック・オプションを発行したり、高めの報酬を設定したりすること)の必要があり、スタートアップにとって実はハイリスクだ。

初期の頃は、メンバー全員があらゆる仕事を分け隔てなくやらないと回らないのに、「私はマネジメントで参画したのでこんな雑務はしない」「自分は、実績のあるエンジニアなので、顧客サポートはしない」といった人がメンバーに入ると、なんでもやろうとしている他のメンバーに不公平感が生じる。

その結果、スタートアップとしての競争優位性の源泉となる、創業メンバーとしての一体感やオーナーシップを毀損してしまう。

■間違い(15)ビジネスモデルの検証が終わる前にパートナーシップや独占契約を結ぶ

他の企業とパートナーシップを組むことで一気にスケールを目指そうとするケースはスタートアップによく見られるが、PMFを達成していない段階でその道に走ってしまう会社が実に多い。例えば、優れた要素技術を持つスタートアップが早々に大手家電メーカーとパートナーシップを組むといったケースだ。

スタートアップはスケールするために、自社から直接顧客にプロダクトを届けながら競争優位性を築くべきだ。特定の企業との関係性に依存し、その企業を通じて間接的にしか顧客のフィードバックを得られなくなる状況は避けたい。

他企業とのパートナーシップを構築するのはPMFを達成して、ビジネスの採算性を合理的に求める段階になって考慮すべきことだ。

■間違い(16)セールスよりもマーケティングやPRにフォーカスする

マーケティングやPRは重要な要素であることは間違いないが、PMFを達成できていない段階でユーザーを集めても穴の開いたバケツで水をくむようなもの。良いサービスもおいしい食事も出せないレストランが、積極的に客集めをするようなものだ。

初期段階のスタートアップが注力すべきはセールスである。ただし、ここでいうセールスとはカスタマーに商品を売り込むことではなく、カスタマーと直接対話して、ネガティブなものも含めフィードバックをどんどんもらい、プロダクトを磨き込むことだ。顧客と対話する現場にはファウンダー自ら足を運び、直接行うべきである。

■間違い(17)仕事の役割を厳密に設ける

初期メンバーは自分の得意、不得意にかかわらず何でもやるべきだ。

エンジニアも顧客と話すし、顧客開発サイドもシステムをある程度分かっていないといけない。UXは全員で磨き込む必要がある。

初期の段階ではメンバー全員でビジネスモデルを構築していくことが重要になる。そのためにはメンバー間の密なコミュニケーションこそが重要であり、得手不得手のみを基準にした縦割りの役割分担をこの段階で持ち込むべきではない。創業メンバーは事業に関する全てを常に学び続ける必要がある。

■間違い(18)NDAを交わす

投資家と会うときにNDA(機密保持契約)を交わそうとする起業家がたまにいる。でもそのような起業家は2つの大事なことを理解していない。

一つは投資家とスタートアップの世界は紹介文化であることだ。「この前、イケてるスタートアップと会ってさ」といった情報交換を兼ねた投資家同士のコミュニケーションは日常的に交わされる。でもどこかの企業とNDAを交わしてしまった瞬間に他の投資家に込み入った話ができなくなってしまうのだ。

もう一つは、アイデア自体に大した価値はないということ。「Ideas are cheap,execution iseverything(アイデア自体は安いもので、それをどう実現するかがプロダクトの価値の全てだ)」この視点を忘れてはいけない。

■間違い(19)受託開発や業務委託を必要以上に受ける

IT系のスタートアップが運転資金を確保するために受託開発やコンサルティングなどのノン・リカーリング・レベニュー(本業以外の売り上げ)を確保することは正当化できる。フェイスブックも資金が乏しいときは創業者のマーク・ザッカーバーグ氏がシステムエンジニアとして外部の仕事を受けていた。

しかし、間違っても本業がおろそかになってはいけないし、受託開発や長期にわたるプロジェクトや手離れの悪い案件を受けるのも避けたい。

■間違い(20)業界の専門家からのアドバイスに頼る

自分に不慣れな領域について業界の専門家から助言を得たりすることはとても重要である。ただ、思考を全て委ねてしまうほど頼り切ってしまうのは行き過ぎだ。資金調達、人事採用、戦略策定などの専門家に助言を求めるのもよいが、最終的な判断を下すのはあくまでビジネスオーナーである自分たちであることを忘れてはいけない。

■間違い(21)VCに積極的にアプローチする

フィンテックやハードウエア開発、バイオテクノロジーなど、初期投資(設備投資やライセンス費用)が大きいものは例外的に最初期から資金調達が必要な場合がある。

だが、基本的にスタートアップはPMFを達成してトラクション(事業の推進力)がある程度出てくる段階まではVCに積極的にアプローチしたり、ピッチイベントに登壇したりする必要はない。PMFを達成していないスタートアップのピッチは、説得性の欠けるものになりがち。結果として、バリュエーションは低くなり、わずかな資金のために多くの株式を外部に渡してしまうことになる。PMFを達成して、事業がスケールできる蓋然性が高くなった時に、調達を始めたほうが交渉を圧倒的にやりやすい。

VC側から自然に投資のオファーが来るくらいまでプロダクトを必死に磨き込むことが重要だ。

そして課題とソリューション(解決策)の検証が済んで、方向性が見えたら、そこから資金調達を本格化すればいい。「今は自分が何に注力すべきか」という視点を忘れてはいけない。(日本経済新聞)

 

(後)ブラジルの未来を切り開く日系人経営者 越山 末巳

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