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AIスタイリスト

アリババは11月11日の土曜日、驚くべきことに、250億ドル分もの商品を売り上げ、「独身の日」の売上記録を更新した。同時に、アリババは密かに、人工知能(AI)を使って小売業を再生するテクノロジーをテストしていた。

先週、上海の中心部にあるショッピングモールの3階で、ヒー・シャオランという50代の女性が、オリーブグリーン色のダウンジャケットを試着室に持ち込んだ。ヒーは試着室の壁に、大きなポスターくらいの大きさのスクリーンを見つけ、驚いた。スクリーンは、衣服に埋め込まれた小さなセンサーでヒーが持っているダウンジャケットを認識し、そのダウンジャケットに組み合わせてもおかしくない他の商品を、フォトアルバムをめくるように表示したのだった。スクリーンに商品の組み合わせを表示する「ファッションAI(FashionAI)」は、実質的にヒーの専属スタイリストになったのだ。

11月11日は独身の日と呼ばれ、アリババは2009年から毎年この日に大規模セールを開催している。ファッションAIが初めて大量の顧客を相手にしたのが、今年の11月11日だった。

ヒーは、スクリーンに表示された商品から、黒のパンツを買おうと思い、サイズを選んだ。スクリーンの右下にある大きなオレンジのボタンを押すと店員が現れ、ヒーに選んだパンツを持ってきてくれた。結局、ジャケットもパンツを買いはしなかったものの、ヒーはコンピューター・プログラムが専門家のように推奨スタイルを教えてくれることに感銘を受けたのだった。「どんな服を買えばいいのかよく分からずにお店に入ってしまうことがあります。でも、これからはもっと効率的に服を選べますね」。

アリババ社内に設けられた、小売に特化した研究チームによって開発されたファッションAIは、新しい技術、特にAIが、小売業をどのように再生できるかということに光を当てている。

A shopper tries Alibaba's FashionAI system.
アリババのファッションAIシステムを試す買い物客。

ファッションAIは強力な機械学習の手法として知られる深層学習を利用している。すでにファッションAIは、アリババのショッピングサイトにある数億種類の衣料品だけでなく、デザイナーやファッション好きの嗜好も学習済みである。加えて、各店舗に合わせてカスタマイズされている。その店舗にある何百種類もの衣料品の中から、似合う服の組み合わせを作り出すのだ。

もしこのテクノロジーがより広く使われるようになれば、消費者には実店舗を訪れる強い動機が生まれ、中国だけではなく米国でも衰退傾向にあるオフラインの小売業の現状を変えることができるだろう。現在、アリババはこのシステムを、中国全土の13店舗に無料で導入している。

アリババは「オフラインの小売業の世界をデジタル化」しようとしているのだと、チャン・フェン最高経営責任者(CEO)は語る。大規模セールの期間中に、特定のレストランや店舗を訪れた人は、アリババのアプリを使ってクーポンを手に入れ、ポケモンGOに似た拡張現実(AR)ゲームをプレイできた。

アリババのような電子商取引のプラットホームがオフラインの小売に進出する理由を、「モバイルインターネットの時代、オンラインとオフラインの小売の融合は時代の趨勢なのです」と中国チェーンストア経営協会のジアンチィ・ホー事務局長は説明した。「消費者は、自分のニーズを満たしてくれるならば、オンラインとオフラインの区別はあまり重要ではないのです」。

中国のもう1つの巨大電子商取引企業、JD.com(京東商城)も、セブンフレッシュ(7Fresh)という、オンライン同様の迅速な配送をする食料品の実店舗を始めようとしている。

中国商務部が9月に発表した報告書で、政府がAIやクラウド・コンピューティングといった技術を利用して小売業を刷新する詳細な計画を公表した。報告書には、2016年にアリババが1日当たり1500万ドルの税金を納めたことに引き合いに出し、台頭する電子商取引技術に政府がてこ入れすることで、経済成長に拍車をかけ、新たな雇用を創出する、と明確な語調で書かれている。

深層学習は商取引の他の側面にも応用できる、とファッションAIプロジェクトを統括しているアリババのジア・メングレイ主任エンジニアは語る。近い将来、アリババはショッピングサイトで利用できる同様のアプリの配布を始める。実店舗内で使われているシステムは同じブランド商品の組み合わせしか推奨しないのに対し、アプリはブランドにしばられない無制限の組み合わせを作り、推奨できる。

中国の小売業界は、技術の向上を積極的に取り入れている。また、AIプログラムは、より大きなデータを蓄積するにしたがって、実店舗をさらに効率化してくれる。つまり、来年の独身の日には、またしても売上記録の更新が期待されるというわけだ。(MIT Technorogy Review)

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