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欧州のスタートアップ起業家が、ブダペストを目指す理由

英国のEU離脱を控え、ヨーロッパの起業シーンにも変化が起きている。グローバル展開を目指すヨーロッパのスタートアップが拠点に選ぶ都市と言えば、最近まではロンドンやベルリンだった。

しかし、イギリスの起業支援情報サイト「Startups」が今年2月上旬に発表した「ブレグジット以降、起業に有利なヨーロッパの都市ランキング」では、ハンガリーの首都ブダペストが1位に選ばれた。

同ランキングは、イギリスとアイルランドを除くヨーロッパ30カ国80都市を、法人税率、輸出コスト、コワーキングスペースの数、イギリスとの間のフライト便数と距離、イギリスとの時差、飲食店の数、コーヒーの平均価格を指標に評価したもの。

ブダペストで生まれたスタートアップには、「LogMeIn」(リモート接続サービス)、「Prezi」(プレゼンテーション用ソフトウェア)、「Tresorit」(クラウドストレージ)などがあり、近年はテック系スタートアップを支援するアクセラレーターやインキュベーターの設立も相次いでいる。

イギリスから移り住んだスティーヴン・タスカーもその波に乗る一人だ。タスカーは2016年、マーケティング企業などにSEOサービスを提供する「SuperSize Digital」を創業。さらに、今年の夏、ウェブサイト制作者やマーケティング起業にA/BテストのSaaSツールを提供する「Polka Dot Tiger」を立ち上げる予定だ。

「(SuperSize Digitalが)これまでうまくやってこられたのは、高度な人材をイギリスよりも低い人件費で雇い、他社より低価格でサービスを提供してきたからだ」とタスカーは語る。

タスカーはイギリスの大学に在籍中の2010年、EUの留学奨励プログラム「エラスムス」を使って、初めてブダペストを訪れた。すぐに街を気に入ったタスカーは翌年、母国で大学を卒業後、ブダペストで働き始めた。

「外国人居住者のコミュニティが比較的小さく、すぐに街なかで出会って知り合いになる。小規模でフレンドリーな環境が居心地よかった」

優秀な人材が低コストで採用できる

だが、2011年当時は国際的なスタートアップが成長できる環境は今ほど整っておらず、タスカーが勤めていたSEO企業も暗礁に乗り上げる。

そこでタスカーは一旦帰国して大企業で経験を積むことを決意。やがてイギリス有数の広告代理店に就職し、オンラインマーケティング部門のトップに登りつめた後、2016年に幼馴染と共同で「SuperSize Digital」を立ち上げた。

再びブダペストに目が向いたのは、大手との熾烈な価格競争の中、創業して半年以内に「SuperSize Digital」の先行きが見えなくなったからだ。タスカーがスタートアップシーンの視察のためにブダペストを再訪すると、5年間で状況は一変していた。

「至るところでスタートアップが生まれていた。どのコワーキングスペースにも多種多様な企業が入居していて、中には旅をしながらオンラインでスタートアップを運営している人々もいた」とタスカーは振り返る。

タスカーは「SuperSize Digital」の拠点をブダペストに移し、2017年には経営を軌道に乗せた。タスカーにとって、ブダペストでビジネスを運営する最大のメリットは人材だという。

「高度な教育を受け、技術を持った若者たちがいる。しかも彼らは、仕事熱心で向上心にあふれている。新しいビジネスを成長させるためには欠かせない存在だ」

また、法人税率の低さも大きな利点だ。ハンガリー政府は2017年1月に法人税をEU加盟国では最も低い9%に引き下げ、さらに「初期ステージ」のスタートアップを対象とした減税措置も導入した。

スタートアップの養成にも力を入れており、中央ヨーロッパ大学をはじめブダペストの内外でインキュベーターの設立を支援している。「これらの利点に加えて、ブダペストはヨーロッパで最も美しい街の一つでもある。スタートアップが集まってくるのは当然だ」とタスカーは話す。

もっとも、デメリットがないわけではない。最大の問題はインフレ率の高さだ。「物価の上昇率が賃金上昇率を上回っていて、多くのハンガリー人が都市部を離れることを余儀なくされている。故郷に帰る人や仕事のために引っ越す人も多い」

それでもテック系のスタートアップを低コストで立ち上げたい起業家にとって、ブダペストは魅力的な都市だとタスカーは主張する。タスカー自身、年内にスタッフを8人から14人に増員するつもりだ。

「事務所を構え、従業員を雇用する従来型のビジネスであれば、ブダペストという選択肢は悪くないはずだ」

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