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(後)ブラジルの未来を切り開く日系人経営者 越山 末巳

『信用』最重視で家族経営の原点貫く
先見性と品質本位で輝きが増す長崎県移住者の出世頭

 

一方、『会社の使命・3カ条』が、Special Fruit社の本社受付や出荷用物流センターなどの壁に大きく掲げられている。それは「(1)地域と社会の発展に貢献し地域密着を貫き、社会と地域住民の生活文化の向上に尽くすこと、(2)当社は常に品質向上に努め、絶えず生産面と販売面でお客様に貢献できるように努力すること、(3)当社は世のため人のために貢献できるように努力すること」。この確固とした3カ条が反映されている好例がある。「2000人の従業員がいるが労働裁判は1年に1人か2人しか起きていない」。「しっかりと働けば100%給与を支払っている」。「従業員や取引先と当社とが約束したことは完全に履行している」。これらがSpecial Fruit社が全てにおいて信用のある会社として、国内はもちろん世界中から認められている理由だ。

ここで越山の人生と家族を紹介しよう。父の名前は美好、母は操で、5人兄弟の男の中の3番目で生まれた(姉がいま川岸を挟んだ隣町のペトロリーナに住んでいる)。子供の頃に父から教わったことは「何事も真面目に生きること」。「経営者としても自分の人生でも契約したらその約束を完全に履行するという考えは父の教えから生まれた。ありがたい教えだった」という。母は「カトリック教の信者でひたむきに生きた人」だった。

30歳の時に家族で再移住を決断した理由について聞くと「決意した当時モジでの農業はよくなかったし、農業の見通しと将来性に限界があった。サンフランシスコ川中流域は将来性があると確信した。その将来性に自分を賭けた。妻も率先して協力してくれた。妻は3世だが私の新天地での新しい世界をつくる夢を後押ししてくれた。このサポートが大きな励みになった。子供は3人、家族5人での再移住だった。母も賛成してくれて大きな力となった」という。

越山は55年生まれで出身地の「ブラジル長崎県人会とは付き合っていないが機会があれば付き合いたい」と生まれ故郷の古里への想いはいまも熱いものがある。自分の性格は「明るくいつも先を見通して積極的に生きること。趣味は「魚釣りを始めて15年になる。アマゾン、マットグロッソ、アルゼンチンに1年に4回行っている、アマゾン川では水上スキーに乗って舟に乗って釣り三昧で1週間明け暮れる」ことが楽しみという。

次にブラジル越山末巳家のヴァンダ夫人と家族構成について。妻はヴァンダ越山、62歳で78年に結婚した。いま妻に感謝の気持ちを込めて贈る言葉は「今年は結婚40年の銀婚式を迎える。難しい事業を二人三脚で一緒になって働いてきた。ありがとうと感謝の一言に尽きる。また良き妻と巡り合えたことに心から感謝している」。家族経営によるSpecial Fruit社の担当部署は、ヴァンダ夫人は労務人事を含めた総務管理担当責任者。長男のロベルト・アキオは41歳でマンゴーの生産管理と販及び&輸出の責任者。次男のフェルナンド・トシオは38歳でブドウとメロンの生産管理と販売及び輸出の責任者。長女のヴァレリア・サユリは35歳で既婚だが財務担当の責任者。そして孫が6人いる。後継者育成については「私は一生懸命努力をしたその結果が、自分の中に自信と誇りが生まれそれが生きている。トシオはこの誇りが人一倍強い。この点で次男のトシオは経営者に向いておりいま社長教育を行っている」という。同時にブラジル越山末巳家の後継世代に残しておきたいことは「子供を小さい時からしっかり教えていくこと、『三つ子の魂100までも』というとても良い日本語がある」。大切にしている言葉は「人生でも経営でも『信用』だ」。

越山に見る経営者としての慧眼はつぎの言葉で明らかだ。「商売が成功している理由は同業者から絶えず5年先を見通した事業展開を行っている。これが新品種導入に繋がり、これを続けたことが現在に繋がっている」という。つまり越山はサンフランシスコ川中流域におけるブドウ産業の成長と発展を築いてきた指導的な人物の1人といってもよいだろう。また無類の努力と根性をもつ経営者としての評価がこれだ。「08年の経済危機で契約金額1500万米ドルのうち60%が回収できなかった手痛い経験をした。しかし私にはこの困難を乗り越えていく絶対的な自信があった。当時は55歳だった。その苦労がいま実を結んでいる」。常人を遥かに超えたすさまじい努力と事業再建に立ち向かって、事態を自らの力で好転の流れに切り替えた事業家イズムが脈々と全身に流れている。

この地で36年かけてブドウとマンゴー栽培で同地を代表する成功者になった越山。いまもブドウ栽培の先進国である米国・カリフォルニア州に毎年出かけて、同業者との情報交換、ブドウ業界の最新情報や市場動向、新商品開発やと新技術のノウハウなど業界の最新情報の収集に努めている。その越山がこう語った。「日本人のいい点は努力して信用される、これを継続していくこと。日本人の強いところを正しく貫き通すこと」。日伯関係で大切な基本は、「私自身、日本人として認められるようにいつも努力している、しっかりやっていればブラジル人は日本人を認める」と言ってサムライ事業家は取材を結んだ。(敬称略 文責 カンノエージェンシー代表 菅野英明)(サンパウロ通信)

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