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ロシアの火薬庫で日本ブーム

 

ロシア南部の北カフカス地方に取材カメラが入りました。旧ソ連の崩壊後、ロシアと独立派が激しい紛争を繰り広げ、最近はイスラム過激派の拠点となっていて、ロシアの火薬庫ともいわれている地域です。チェチェン、ダゲスタン、北オセチアを取材して見えてきたのは、意外な日本とのつながりでした。

チェチェン共和国のグロズヌイ。住人のほとんどはイスラム教徒で、誇り高き不屈の山岳民族として知られています。家族のつながりをとても大事にし、この地にやってきたお客さんを何よりも大事にもてなす習慣もあります。ただ、グロズヌイの町並みはすべて真新しく、チェチェン人の伝統を感じられるものはありません。グロズヌイは今、建設ラッシュです。町の中心部には高層ビルが立ち並び、きらびやかな巨大モスクも建設されました。1994年から分離独立を目指したチェチェン共和国とロシアの間で激しい戦闘が起きました。2度にわたったチェチェン紛争では10万人以上が死亡、一般市民の犠牲も多く、人権侵害が指摘されています。現在、大規模な戦闘は収まっていますが、独立運動は過激化し、チェチェンの周辺地域でゲリラ戦やテロを起こすようになっています。徹底した治安維持とロシアの積極投資で、グロズヌイだけは「カフカスのドバイ」といわれるまでの開発が進んでいます。もはや紛争の影は町中から見られません。
チェチェン共和国・舞踊団長:「政府に感謝しています。チェチェン共和国は世界の中心です。山々も街もここではすべてが美しいので、皆さんに来てもらいたい」
一応の平穏を取り戻したかつての戦場で、人々はどのような暮らしをしているのでしょうか。柔道のチェチェン代表チームはロシアでも強豪で知られ、オリンピックの金メダリストも輩出しています。子どもたちにとっては憧れです。
エルマー君(10):「チャンピオンになりたい」
アスカット君(13):「もっと強くなって勝てるようになりたい。まだまだだけど、練習してうまくなりたい」
プーチン大統領を後ろ盾として、チェチェン共和国で絶対的な権力を持つカディロフ首長も柔道の経験者です。鶴の一声で新しい柔道場を建設させています。
代表チームの監督:「カディロフ首長は私たちを支えてくれるだけでなく、柔道を愛しています。頻繁に視察に来ることからもそれが分かります」
同じ北カフカスの国、北オセチア・アラニヤ共和国へ向かいました。北オセチアの人口は約70万人、多くはキリスト教徒です。この国にもまた、紛争に巻き込まれた悲劇がありました。2004年、ベスランという町の学校がチェチェンの武装勢力に占拠され、400人近い人が殺されました。うち半数は子どもたちでした。あれから14年、北オセチアであるグループを訪ねました。コスプレグループ「せつな」。12年前から活動を始め、現在は15人ほどのメンバーがいます。撮影会を開いたり、写真をウェブサイトに投稿したり、ロシア各地のコスプレイベントに参加したりしています。リーダーは北オセチアにおけるコスプレの草分けのキリコさんです。
「極道の妻」のコスプレ、キリコさん:「14歳の時、松本清張の『霧の旗』を読んで感動しました。だから、ニックネームを主人公の桐子(キリコ)にしました」
小道具担当のマルゴさんは、15歳の時に見た日本のアニメ「エヴァンゲリオン」をきっかけにコスプレの世界にのめり込みました。アニメ好きが高じ、インターネットを通じて独学で日本語を学んでいます。
マルゴさん:「肉じゃが食べたい。鍋、食べたい」
北オセチアでコスプレを楽しむには覚悟もお金も必要です。衣装や小道具からセットのほとんどはハンドメイド。着物は日本からネットで注文しましたが、発送から届くまで1カ月以上、かかることもあったそうです。
「ふしぎ遊戯」夕城美朱のコスプレ、イレーナさん:「最初に一番、人気があったのは『ナルト』。私が一番、好きなアニメは『鋼の錬金術師』。コスプレは私のアニメ愛の表現方法です」
「艶漢」六口のコスプレ、マディーナさん:「メディアが発展して、今ではどんな状況でもたくさんの人がコスプレやアニメを楽しむことができるようになりました」
「極道の妻」のコスプレ、キリコさん:「戦争や紛争が続いています。日本文化のおかげで、灰色の日常のなかで光を見つけました」
ロシア最南端のカスピ海西岸に位置するダゲスタン共和国です。紀元前6世紀に建設されたロシア最古の都市「デルベントの城壁」は世界遺産に登録されています。東西交易の中心だったデルベントはまさに文明の十字路ともいえる町でした。中世の趣を残す町並み、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、多様な文化が育んだ歴史を体現する町にもかかわらず、観光客はほとんどいません。2015年に過激派組織「イスラム国」がダゲスタンに支部設立を宣言。山岳地帯はイスラム過激派の温床となっていて、治安部隊が掃討作戦を続けているのです。そんなダゲスタンの首都マハチカラに和食レストランができたと聞いて行ってみました。「ジャペンゴ」はダゲスタンで最初の和食レストランとして1年前にオープンしました。連日、若者を中心ににぎわっています。
来店客:「日本食は面白いね。好奇心をくすぐられます。私は新しい味を試したかったの」
「ジャペンゴ」従業員:「日本料理は受け入れられています。スープの『トムヤンクン』もその一つです。シーフードをスパイシーに味わうのが良いですね」
多少の勘違いはありますが、和食が好きなことは間違いないようです。
「ジャペンゴ」マーケティング部長:「最初は『誰が生の魚を食べるのか』と思いましたが、今では日本食ブームです。日本食はダゲスタン共和国になくてはならないものになりました」
ダゲスタン共和国を含めた北カフカスはロシアで一番、貧しい地域です。ロシア政府や強権的な地元政府による弾圧、イスラム過激派の脅威もあります。それでも人々の日本への関心は高く、好奇心旺盛でした。そして、何よりも自分たちのことをもっと知ってほしいという気持ちを強く感じました。
日本食レストラン店長:「ダゲスタンのイメージはとても悪いです。でも、実際は違うんです。カフカスは美しい場所です。おいしい食べ物もたくさんあります。もっと皆に来てもらいたい」

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