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ゲーム配信サイトのユーザーを激増させた「非伝統的な戦略」

君らがバカを見るところは面白そう。だから投資するよ」

エメット・シア(34)は、米人気アクセラレータ「Yコンビネータ」の面接で投資家のロバート・モリスにそう冗談っぽく言われたことを今も覚えている。

シアはその日、友人のジャスティン・カンらと共に24時間365日のライブ配信サイト「Justin.tv」についてモリスとポール・グレアムにプレゼンしていた。内容は「ジャスティンの私生活をネットで毎日放送します!」というもの。もともとは、2人の会話をネットに上げていくという思いつきから始まった。それが、「どうせなら、僕らの生活を丸ごと見せることにしようぜ」という話になったのだ。「ジャスティンは有名になりたかったんだ。僕は違ったけれどね」とシアは話す。

モリスはビジネスモデルそのものには懐疑的だったが投資を決めた。片や、グレアムはもう少し楽観的だった。──あまりにもクレイジーなアイデアだから、かえってうまくいくかもしれない。

グレアムの直観は、ある意味正しかった。

その“クレイジーなアイデア”は紆余曲折を経て、ゲーム配信プラットフォーム「Twitch(ツイッチ)」に形を変え、1億人以上のコミュニティメンバーを抱える世界屈指のデジタル・プラットフォームに化けたからだ。2014年にはアメリカで4番目のトラフィックを抱えるサイトに成長し、同年9月にはアマゾンに約9億7000万ドルで買収された。「有名になりたくなかった」と語るシアは現在、同社の共同創業者兼CEOである。

生き残りを決める「クリティカルマス」

Twitchの前身となったJustin.tvもネット史に名を残す華やかな散り方をしたといえる。サイトを閉鎖する14年までの間、ピーク時には月間6000万人が視聴していた。それでもサービス期間全体を通じてユーザー数の獲得には苦しんでいる。

プラットフォームを作ったところで、肝心のコンテンツが面白くなければユーザーは集まらない。そこがデジタル・プラットフォーム経営の難しい点だ。

そこでサービスを爆発的に普及させるためにも、必要な最小限の市場普及率、いわゆる「クリティカルマス」が不可欠となる。前出のエバンスとシュマレンシーは「あらゆる多面的プラットフォームが生き残り、繁栄するにはクリティカルマスに辿り着くための戦略が必要」だと指摘する。



Justin.tvはプラットフォームを開放し、ライブ配信、チャット、サイト内検索などの機能を加えてユーザーが使いやすいように工夫するなど、健闘していたが、さらなる成長戦略が描けなくなっていた。加えて一部のユーザーが映画やスポーツ中継の映像を投稿するなど著作権違反を犯していたため、放送局や映画会社からも訴えられていた。Twitchが生まれたのはそんなときだった。

Justin.tvの方向性に迷いが生じていたとき、ゲームプレーを実況する「Justin.tv Gaming」のユーザー数が安定して伸びていることにシアは気づいた。人数こそ少ないものの、全配信の70%近くを占めていた。また、ゲーム会社が実況配信では著作権を強く主張せず、むしろ「宣伝になる」と好意的だった点も大きかった。加えて広告を出稿しやすい。

そして何よりも莫ばく大だいなゲーム市場が魅力的だった。「視聴者とゲーム実況者で成り立つ二面性の市場では、まずは人気の実況者が必要」とシアは考え、世界中のゲーム実況者と話し合い、彼らのニーズを探った。そして、彼らが求めているものが「金」「知名度」「ファンからの支え」であることがわかった。実況者自身がプラットフォームでマネタイズできる仕組みが必要だったのだ。「何よりも『実況者』にフォーカスするべき、と気づけたことがTwitchにとって大きかった」(シア)

そこで、人気実況者にはパートナープログラムへの参加を働きかけ、視聴者がサブスクリプション(定額視聴料)やアフィリエイト(広告配信)、ゲーム販売などで収益を上げられるようにした。それを機にユーザー数は急増。実況者に惹かれた視聴者が実況者になるなど、ユーザーがユーザーを呼び込む好循環を生み出している。

デジタル・プラットフォームに限らず、多くの企業は自らが儲かる戦略を優先しがちだが、Twitchはユーザーのインセンティブを優先することでコンテンツを増やし、利益が自らに還流される道筋をつけた。プラットフォームの性質を理解した上で、非伝統的な戦略を取ることが効果的な好例である。


エメット・シア◎ゲーム配信サイト「Twitch(ツイッチ)」の共同創業者兼CEO。イェール大学でコンピュータサイエンスを専攻後、大学の友人らと共にオンラインカレンダーサイト「Kiko」や、動画配信サイト「Justin.tv」を共同創業。2011年、Justin.tvでも特に人気の高かったゲーム配信部門をスピンアウトさせ、Twitchを立ち上げた。

ツイッチ◎2011年創業の世界最大のゲーム配信・ソーシャルビデオプラットフォーム。14年にアマゾン傘下に入り、現在はゲーム実況やeSportsのみならず、音楽やクリエイティブアート、プロレス、アニメなどのコンテンツも配信中。毎日1500万人近くのアクティブユーザーと、2万5000人以上のパートナープログラムを抱えている。ピーク時には同時にサイト全体で200万人以上が閲覧する。(Fobes)

workstyleフランスから見た、日本の働き方改革に足りない視点

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